女優・花總まりにとって、ミュージカル『エリザベート』は単なる代表作ではない。1996年の宝塚歌劇団雪組による日本初演でタイトルロールを演じて以来、宙組への組替え、宝塚退団後の東宝版への出演を経て、長年にわたり演じ続けてきた、キャリアを象徴する特別な役である。
2026年は日本初演から30周年を迎え、宝塚歌劇団では永久輝せあ・星空美咲を中心とする花組による再演が実現した。花總まり自身も2026年に舞台やコンサートで活動を続けている。ここでは、1996年の雪組初演、1998年の宙組公演、2015・2016・2019年の東宝版、2022年から2023年にまたがる公演までを時系列で整理し、歌唱力や役作り、受賞歴、宝塚版と東宝版の違い、2026年の最新状況を解説する。
【まず結論】花總まりにとって『エリザベート』は生涯を代表する特別な役

花總まりは1991年に宝塚歌劇団へ入団し、1994年に雪組トップ娘役へ就任した。1996年、日本初演となった宝塚版『エリザベート』で皇后エリザベートを演じたことが、後の長い舞台人生を方向づける大きな転機となった。
初演当時の花總は、若くして大作のタイトルロールを任された存在だった。相手役のトートを演じたのは一路真輝。フランツ・ヨーゼフ役は高嶺ふぶき、ルイジ・ルキーニ役は轟悠という顔ぶれだった。
この作品の特徴は、エリザベートの少女時代から皇后としての人生、そして最期までを描くことにある。若さや自由への憧れ、宮廷生活での孤独、家族との関係、老いと死への向き合い方など、長い時間の経過を一人の俳優が表現しなければならない。
しかも、作品全体が歌によって物語を進める構成である。台詞だけでなく、歌唱そのものによって登場人物の感情や葛藤を伝える必要があるため、演技と歌唱の両面で高い表現力が求められる。
花總本人も2015年のインタビューで、この役が自身にとって特別な存在であることを語っている。エリザベートは、宝塚時代の代表作であると同時に、退団後にミュージカル女優として活動するうえでも大きな意味を持つ役になった。
「この役に出会えたからこそ、今の私がある」
これは2015年のローチケ演劇宣言!のインタビューで語られた言葉だ。初演から年月を重ねても役への思いが薄れないことが伝わる。花總まりとエリザベートは、出演歴だけでは切り離せない関係にある。
【完全年表】花總まりのエリザベート歴代出演歴を1996年から2023年まで整理
花總まりの出演歴を整理すると、大きく分けて宝塚時代と退団後の東宝ミュージカル時代に分かれる。加えて、通常の本公演だけでなく、過去の出演者が集まるガラ・コンサートにも参加している。
所属事務所ブルーミングエージェンシーの公式プロフィールと宝塚歌劇団の上演記録をもとに、主要な公演をまとめた。
| 時期 | 公演・所属 | 花總まりの役・主な内容 |
|---|---|---|
| 1996年2月~6月 | 宝塚雪組・日本初演 | エリザベート役。一路真輝の相手役として出演。 |
| 1998年10月~1999年3月 | 宝塚宙組 | エリザベート役。宙組創設後の再演にも参加。 |
| 2012年11月 | エリザベート スペシャル ガラ・コンサート | エリザベート役として出演。 |
| 2015年6月~8月 | 東宝版『エリザベート』 | 帝国劇場で主演。宝塚退団後、東宝版に初参加。 |
| 2016年6月~10月 | 東宝版『エリザベート』 | 帝国劇場、梅田芸術劇場、博多座、中日劇場で主演。 |
| 2016年12月~2017年1月 | 宝塚20周年スペシャル ガラ・コンサート | ゲスト出演。 |
| 2019年6月~8月 | 東宝版『エリザベート』 | 帝国劇場で主演。愛希れいかとのダブルキャスト。 |
| 2020年 | 東宝版『エリザベート』予定公演 | 新型コロナウイルスの影響で公演中止。 |
| 2022年10月~2023年1月 | 東宝版『エリザベート』 | 4大都市公演で主演。愛希れいかとのダブルキャスト。 |
| 2026年 | 宝塚花組による30周年再演 | 花總まりは出演せず、星空美咲がエリザベートを担当。 |
出典:花總まり公式プロフィール、宝塚歌劇団公式上演記録、各公演の公式キャスト情報。
1996年:宝塚雪組の日本初演でエリザベート役に抜擢1996年2月16日から3月25日まで宝塚大劇場で上演された雪組公演が、日本における『エリザベート』の初演だった。東京公演は同年6月3日から6月30日まで行われている。
宝塚歌劇団の公式上演記録によると、宝塚大劇場では55回の公演で約14万6,000人、旧東京宝塚劇場では47回の公演で約12万4,000人を動員した。
当時のトップスターは一路真輝。花總まりはその相手役として、エリザベートという歴史上の皇后を演じた。
この公演は、ウィーン発のミュージカルを日本の観客に広く紹介する重要な機会となった。以後、宝塚歌劇団の各組で繰り返し上演される人気作品へと成長していく。
1998年:宙組創設後も同じ役を続投1998年1月、花總まりは新設された宙組へ組替えとなり、初代トップ娘役に就任した。
そして同年10月30日から12月20日まで宝塚大劇場で上演された宙組版『エリザベート』でも、再びエリザベートを演じている。東京公演は1999年2月12日から3月29日まで行われた。
この公演では、トートを姿月あさとが担当。花總は雪組時代とは異なる組の環境で、同じタイトルロールに挑んだ。
宝塚歌劇団の公式記録によれば、宙組公演は宝塚大劇場69回、東京公演65回にわたって上演された。日本初演から2年後の再演であり、作品が宝塚の重要な演目として定着していく過程を示す公演でもある。
2015年・2016年:退団後に東宝版へ挑戦2006年に宝塚歌劇団を退団した花總まりは、その後、舞台を中心に活動を続けた。
大きな転機となったのが2015年6月から8月まで帝国劇場で上演された東宝版『エリザベート』である。宝塚版の日本初演から約19年を経て、再びタイトルロールに挑むことになった。
2015年公演では蘭乃はなとのダブルキャストでエリザベートを担当。トートは城田優と井上芳雄、ルイジ・ルキーニは山崎育三郎と尾上松也が演じた。
翌2016年には再演が実現し、帝国劇場だけでなく梅田芸術劇場、博多座、中日劇場でも上演された。花總まりは各地でエリザベートを演じ、舞台での存在感をさらに確立していった。
2019年:愛希れいかとの共演で再びタイトルロールへ2019年6月から8月の帝国劇場公演では、花總まりと愛希れいかがエリザベートを担当した。
愛希れいかは宝塚月組の元トップ娘役であり、異なる時代の宝塚を代表する娘役経験者が、同じ作品のタイトルロールを担うキャスティングも話題となった。
この公演では井上芳雄、古川雄大がトートを担当。花總は過去の公演経験を持ちながらも、新たな共演者や演出環境のなかで役を再構築していった。
2022年~2023年:4大都市公演で再登場2022年10月から2023年1月にかけて、東宝版『エリザベート』が帝国劇場、御園座、梅田芸術劇場、博多座で上演された。
花總まりは愛希れいかとともにエリザベートを担当。トートには山崎育三郎、古川雄大、井上芳雄らが名を連ねた。
ここで注意したいのは、2023年に独立した別の新作公演があったわけではないという点だ。2022年秋に始まり、翌2023年1月まで続いた同一公演である。
また、2020年にも東宝版の上演が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で中止となっている。したがって、2020年の公演を花總まりの実際の出演歴に加えることはできない。
なお、ガラ・コンサートについては、2012年11月のスペシャル・ガラ・コンサート、2016年12月から2017年1月の宝塚20周年スペシャル・ガラ・コンサートへの出演が公式プロフィールに記載されている。2021年のTAKARAZUKA25周年ガラ・コンサートは公式出演者一覧に花總まりの名前がないため、別の出演歴として混同しないようにしたい。
出典:ブルーミングエージェンシー公式プロフィール、宝塚歌劇団公式上演記録、梅田芸術劇場公演情報。
【評判と評価】花總まりのエリザベートはなぜ高く評価されるのか
花總まりのエリザベートが長年にわたり評価されている理由は、宝塚時代の知名度だけではない。東宝版への出演後、演技に対する賞を獲得し、ミュージカル女優としての実績を客観的な形で残してきた点が大きい。
2015年度の読売演劇大賞で優秀女優賞花總まりは、第23回読売演劇大賞で優秀女優賞を受賞している。所属事務所の公式プロフィールでも、2015年の受賞歴として掲載されている。
宝塚で培った表現力を持ちながら、退団後のミュージカル界でも評価を得たことは、彼女のキャリアにおける重要な実績だ。
2015年度の第41回菊田一夫演劇大賞を受賞さらに大きな評価が、第41回菊田一夫演劇大賞である。
一般社団法人映画演劇文化協会の受賞記録では、花總まりの受賞理由は「エリザベート」におけるエリザベート役の演技に対して、と明記されている。
これは単に長く同じ役を演じたことへの表彰ではない。作品の中心人物として舞台を成立させた演技そのものが評価対象になったということだ。
また、2019年にはオーストリア共和国有功栄誉金章を受章している。オーストリアゆかりの作品を長年演じてきた経歴とともに、国際的な文化交流の文脈でも名前が挙がる存在となった。
歌唱力の評価は「歌で感情を演じる力」にある花總まりの歌唱力を語るうえで興味深いのは、本人が初演当時の自分の歌について率直に振り返っていることだ。
2015年のローチケ演劇宣言!のインタビューでは、初演当時は歌唱面に不安があり、エリザベート役に決まった際には周囲からも心配する声があったと明かしている。
しかし、本人にとって『エリザベート』は、歌を単に披露するのではなく、歌によって芝居を進める面白さを初めて実感した作品だった。
その後の『レディ・ベス』では、宝塚的な歌唱について指摘を受けた経験も振り返っている。ミュージカルの舞台で求められる歌唱表現を考え、作品や共演者から学んできたことがうかがえる。
つまり、花總まりの歌唱力を評価する際には、単純な声量や高音の技術だけで判断するのではなく、人物の心理や人生の変化を歌に反映させる表現力にも目を向けたい。
花總まりの評価を裏付ける主な実績- 1996年:宝塚版日本初演でエリザベート役を担当。
- 2006年:宝塚歌劇団を退団。トップ娘役在任期間は通算12年3カ月で歴代最長記録。
- 2015年:第23回読売演劇大賞優秀女優賞。
- 2016年:第41回菊田一夫演劇大賞。
- 2019年:オーストリア共和国有功栄誉金章。
- 2021年:第42回松尾芸能賞演劇部門優秀賞。
これらの実績から見えてくるのは、宝塚のスターとしての評価と、退団後のミュージカル女優としての評価が両立していることだ。花總まりのエリザベートは、過去の人気に支えられているだけの役ではない。
出典:ブルーミングエージェンシー公式プロフィール、一般社団法人映画演劇文化協会、ローチケ演劇宣言!のインタビュー。
【役作りを分析】花總まりはエリザベートの人生をどう演じてきたのか
花總まりのエリザベートを理解するうえで重要なのが、同じ役を何度も演じながら、毎回同じ表現を繰り返すわけではないという点だ。
エリザベートは、オーストリア皇后として知られる実在の人物をモデルにした役である。自由を求める少女から、宮廷のしきたりに苦しむ皇后、そして人生の終盤を迎える女性まで、長い年月を舞台上で表現する必要がある。
歴史資料を読み返し、人物像を掘り下げる2015年の東宝版出演に際し、花總まりはエリザベートに関する資料を読み返すところから準備を始めると語っている。
特に注目したいのは、本人が宝塚版と東宝版ではエリザベートの描かれ方が異なると説明していることだ。
同じ脚本や音楽を土台にした作品でも、演出やキャスト構成、物語の見せ方が変われば、演じる側が意識する人物像も変わってくる。宝塚時代に完成させた演技をそのまま持ち込むのではなく、東宝版の作品世界に合わせて役を見直す必要があった。
少女時代から晩年までの変化を一つの人物としてつなぐエリザベート役の難しさは、人生の異なる段階を演じ分けることにある。
若い頃の自由への憧れと、皇后として背負う責任は同じではない。フランツ・ヨーゼフとの関係、姑ゾフィーとの確執、息子ルドルフとの関係など、周囲の人物との関わりによって感情も変化していく。
花總まりがこの役を長年演じてきたことは、こうした人物の変化を表現するうえで大きな蓄積となったはずだ。
ただし、過去の演技を再現することだけが役作りではない。長年の経験を持つ俳優だからこそ、その時点の自分が感じ取るエリザベートの姿を舞台に反映できる。
2019年の再演でも役作りは変化し続ける2019年の合同取材会では、2015年、2016年に続いて再びエリザベートを演じるにあたり、役作りの計画について質問を受けている。
花總まりは、自分のなかにさまざまな目標や構想がある一方、稽古中にも変化し、本番が始まってから千秋楽まで変わっていく可能性があるという趣旨の回答をしている。
この発言からは、長年演じてきた役であっても、最初から完成形を決めてしまわない姿勢が読み取れる。
過去の経験を土台にしながら、稽古場での発見や共演者とのやり取りによって人物像を更新する。それが、繰り返し同じ役に挑む俳優としての強みになっている。
出典:ローチケ演劇宣言!2015年インタビュー、SPICEによる2019年合同取材会レポート。
【徹底比較】花總まりが演じた宝塚版と東宝版『エリザベート』の違い
花總まりの出演歴を理解するうえで欠かせないのが、宝塚版と東宝版の違いである。
同じ『エリザベート』という作品でも、両者は舞台の構造や出演者の構成が異なる。花總まり自身も、2015年のインタビューで東宝版は宝塚版とエリザベートの描かれ方が違うと話している。
宝塚版は男役と娘役による独自の舞台表現宝塚歌劇団は女性のみで構成される劇団であり、男性役も女性の男役が演じる。
1996年の雪組公演では一路真輝がトートを演じ、花總まりがエリザベートを担当した。1998年の宙組公演では姿月あさとがトートを務めた。
宝塚版の大きな魅力は、男役と娘役が作り上げる様式美や、トップスターを中心とする舞台構成にある。トートとエリザベートの関係も、宝塚独自のロマンチックな舞台表現によって描かれる。
東宝版は多様な俳優によるミュージカルとして展開一方、東宝版では男女の俳優がそれぞれの役を演じ、ミュージカル俳優としての歌唱や演技を中心に作品が構成される。
花總まりが出演した2015年版では、トート役に城田優と井上芳雄、ルイジ・ルキーニ役に山崎育三郎と尾上松也が起用された。
2019年版では愛希れいかがエリザベートを担当し、トートには井上芳雄と古川雄大が参加。2022年版でも花總まりと愛希れいかがダブルキャストとして並び、トートには山崎育三郎、古川雄大、井上芳雄らが起用された。
両者を比較すると見えてくる花總まりの強み宝塚版から東宝版への移行は、単なる出演劇場の変更ではない。舞台の表現様式や共演者の構成が変わるなかで、同じ人物を演じ続ける挑戦だった。
花總まりは、宝塚時代に培った役への向き合い方を持ちながら、東宝版ではミュージカル俳優として新しい表現に取り組んだ。その結果、宝塚ファンだけでなく、東宝ミュージカルを中心に観劇する層にも知られる存在となった。
どちらが優れているかという単純な比較ではなく、宝塚版と東宝版では何を魅力として楽しむかが異なる。花總まりの出演歴は、その違いを一人の俳優のキャリアを通して見ることができる点でも興味深い。
【2026年最新】花總まりの現在と宝塚花組『エリザベート』再演の注目点
2026年は『エリザベート』の日本初演から30周年にあたる記念すべき年だ。宝塚歌劇団では8年ぶりの再演が決まり、花組が新しい舞台を作り上げている。
2026年花組版は永久輝せあ・星空美咲が主演2026年の宝塚花組公演『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』では、永久輝せあがトート、星空美咲がエリザベートを演じる。
主な配役は次のとおりだ。
- トート:永久輝せあ
- エリザベート:星空美咲
- フランツ・ヨーゼフ:聖乃あすか
- ルイジ・ルキーニ:極美慎
- ルドルフ:侑輝大弥・希波らいと
- ゾフィー:美風舞良
宝塚歌劇団の公式発表によると、宝塚大劇場公演は2026年10月17日から11月22日まで。東京宝塚劇場公演は2026年12月19日から2027年2月7日まで予定されている。
2026年11月3日現在、宝塚大劇場公演は上演期間中であり、東京公演はこれから始まる予定だ。
花總まりは2026年花組公演に出演するのかここは検索時に混同しやすいポイントである。
2026年の花組公演に花總まりは出演していない。エリザベート役は星空美咲が担当している。
花總まりは1996年の雪組初演、1998年の宙組公演、そして退団後の東宝版でエリザベートを演じた俳優であり、2026年版は新しいキャストによる再演となる。
30周年の記念公演であっても、過去の出演者が必ず参加するわけではない。今回の花組公演は、永久輝せあと星空美咲を中心に新たな舞台を作るプロダクションとして位置づけられている。
花總まりの2026年の舞台活動花總まりは2026年も舞台を中心に精力的に活動している。
所属事務所の公式プロフィールに掲載されている主な出演歴は次のとおりだ。
- 2026年3月:ミュージカル『破果』に爪角(チョガク)役で出演。
- 2026年4月:岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み!」ミュージカル版に博多座で出演。
- 2026年8月:『石丸幹二 オーケストラコンサート2026』に出演。
- 2026年7月~9月:ミュージカル『AGATHA』でアガサ・クリスティ役を担当。
特に『AGATHA』では、アガサ・クリスティ役を務め、東京、愛知、大阪、福岡での公演に参加した。『エリザベート』で皇后を演じてきた花總が、今度は世界的な推理作家を舞台で表現するという点も興味深い。
2027年には『モーツァルト!』への出演も予定加えて、所属事務所の公式プロフィールには、2027年2月から5月に予定されるミュージカル『モーツァルト!』への出演情報も掲載されている。
役柄はヴァルトシュテッテン男爵夫人。日生劇場、博多座、愛知県芸術劇場、梅田芸術劇場メインホールでの公演が予定されている。
『エリザベート』だけに活動を限定せず、異なる時代や人物を描くミュージカルで新しい役柄に挑戦している点は、現在の花總まりを理解するうえで見逃せない。
出典:宝塚歌劇団公式2026年花組公演情報、花總まり所属事務所公式プロフィール。
【プロの結論】花總まりのエリザベートを評価するときに見るべき3つのポイント
花總まりの『エリザベート』を理解するには、単純に出演回数や人気だけを見るのでは不十分だ。長期にわたる役との関係、歌唱表現の変化、宝塚版と東宝版の違いという3つの観点から考える必要がある。
1. 同じ役を長く演じたこと自体が大きな財産1996年の初演から2023年の公演まで、花總まりは異なる劇団環境や共演者のなかでエリザベートを演じてきた。
初演時の若々しい表現と、退団後の東宝版で見せる表現を同じ基準で比較するのではなく、時間の経過とともに役の解釈がどう変化したのかを見ることが重要だ。
2. 歌唱力は演技と切り離さずに評価する『エリザベート』は歌によって物語が進む作品である。したがって、声の美しさだけでなく、歌のなかで感情や人物の変化を表現できているかが大切になる。
花總まり自身が初演当時の歌唱面の課題を振り返っていることは、彼女のキャリアを考えるうえで重要な材料だ。最初から完成された歌唱力を持っていたという見方よりも、長い舞台経験のなかで表現を磨いてきた俳優として評価するほうが実像に近い。
3. 2026年の花組版は過去の再現ではなく新しい世代の挑戦2026年の花組版では、星空美咲がエリザベートを演じる。花總まりが築いた歴史を知っている観客にとっては、新しい娘役がどのような皇后像を作るのかが見どころとなる。
永久輝せあのトートとの関係性も含め、過去の雪組・宙組・東宝版とは異なる組み合わせによる舞台が生まれる。
花總まりの演技を知る人は、その歴史を踏まえて新しい舞台を見ることができる。一方、2026年版から作品に入る人は、過去の演技と比較せず、現在のキャストが作り上げる物語を楽しむこともできる。
【よくある質問】花總まりのエリザベートに関するFAQ
Q1:花總まりが初めてエリザベートを演じたのはいつ?
A1:1996年2月の宝塚歌劇団雪組公演が日本初演で、花總まりはタイトルロールのエリザベートを演じた。1998年の宙組再演でも同役を担当している。
Q2:花總まりは東宝版エリザベートに何回出演した?
A2:2015年、2016年、2019年、2022年~2023年の公演に出演した。2020年にも公演が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で中止となっている。
Q3:花總まりのエリザベートはなぜ評価が高い?
A3:宝塚時代からの長い出演歴に加え、東宝版での演技が第23回読売演劇大賞優秀女優賞、第41回菊田一夫演劇大賞などで評価されたため。歌唱による感情表現と、少女時代から晩年までを演じ分ける役作りも特徴だ。
Q4:2026年の宝塚花組エリザベートに花總まりは出演する?
A4:出演しない。2026年花組版では永久輝せあがトート、星空美咲がエリザベートを担当している。
Q5:花總まりのエリザベートのガラ・コンサート出演歴は?
A5:公式プロフィールには2012年11月のスペシャル・ガラ・コンサートと、2016年12月~2017年1月の宝塚20周年スペシャル・ガラ・コンサートへの出演が記録されている。
Q6:2026年現在、花總まりはどのような活動をしている?
A6:ミュージカル『破果』『AGATHA』などの舞台やオーケストラコンサートに出演している。また、2027年にはミュージカル『モーツァルト!』への出演も予定されている。
花總まりの『エリザベート』出演歴は、1996年の宝塚雪組初演から1998年の宙組公演、2015年・2016年・2019年の東宝版、そして2022年から2023年にまたがる公演へと続いている。
宝塚歌劇団でトップ娘役として長い年月を過ごし、退団後も同じ役に挑み続けたことは、ミュージカル界でも印象的なキャリアだ。第23回読売演劇大賞優秀女優賞や第41回菊田一夫演劇大賞といった実績も、その演技が高く評価されてきたことを示している。
一方、2026年の花組再演では永久輝せあ・星空美咲という新しいコンビが作品を担う。花總まりが出演する公演ではないものの、1996年の日本初演から30年という節目に、作品の歴史を振り返る絶好の機会となっている。
そして花總まり自身も、2026年の『AGATHA』など新しい舞台に挑戦し、2027年の『モーツァルト!』出演も予定されている。
花總まりのエリザベートを知ることは、日本のミュージカル史における『エリザベート』の歩みを知ることでもある。過去の名演を懐かしむだけでなく、次の世代がどのようなエリザベート像を作り上げるのか。その変化を見届けることが、30周年を迎えた2026年の大きな楽しみといえる。